DOMMUNEーゲーテ・インスティトゥート東京開設60周年記念企画 「シュトックハウゼンvs刀根康尚ー電子音楽の黎明と日本のフルクサス」メモ
刺激的な内容
おそらく何回かに分けて配信される予定なのだろうが、今回はシュトックハウゼン絡みの話が中心だった シュトックハウゼンの電子音楽『テレムジーク』は、1966年に東京のNHK電子音楽スタジオにて製作され、オリジナル・テープは1966年3月22日に東京のNHKスタジオにて世界初演されている。 テレムジークは世界中の民族音楽をコラージュしたような作品で、日本のお寺の鐘の音とか、伝統的な打楽器の音がサンプリングされている。
シュトックハウゼンは『テレムジーク』を作曲した目的として「「私の」音楽ではなく、全地球の、あらゆる国々と人種の音楽を作曲する」「作曲上の作為によって「統合され」たりせず、むしろお互いの精神の自由な遭遇において本当に融合しあうように」とか言っている
ここら辺シュトックハウゼンには一種のユートピア思想みたいなのがあったんじゃないかと本編では語られていた この思想は世界中の国歌をコラージュした『Hymnen』にもあらわれている あと、電子音楽というと機械的なイメージであるが、シュトックハウゼンは人間の、身体的なアプローチも考えていたという話があった
この辺、たぶんフルクサスと絡んだ『Originale』(オリギナーレとかオリジナーレともいう)と関係している。本編でもその辺が語られた。オリギナーレのアクションコンポーザーはナム・ジュン・パイクである。シュトックハウゼンと組むということで、フルクサスが分断したみたいな話もあったが、よくわからない。というかオリギナーレについては日本では情報もあまりない。調べるとなんか濃い。参考→ 刀根康尚さんについてはほとんど知らなかったが、彼もまたフルクサスに参加してた。ノイズミュージックの第一人者であるようだが、ほとんど知られていないんじゃないか。僕も今回きっかけで調べたが、音楽もさることながら、シュルレアリスムで卒論を書いてること、芸術や音楽に関する論文を相当書かれていることに驚いた。 刀根さんの、CDに故意に傷をつけてエラーを起こすことで、ノイズを生み出すという手法は、オヴァルを思い出したが、ゲストの佐々木敦さんがそこに言及していたので感心した。というか佐々木敦のコメントがいちいちキレていて、流石というかなんというか。音楽学者である柿沼敏江さんが隙間で出してくる情報もすごいツボをついてくるので、今回のメンバーで音楽について好きに語らせたらいいんじゃないかと思う そんな話を置いておいて、佐々木さんがグリッチ=エラーの話をしていて、作曲においてエラーを起こすこと、これは作品を作家の手から放す(意図しないものを引き起こす)という試みである。具体的な偶然性の導入は、ジョン・ケージ以降試みられてきたことであるが、ある媒体を使ってエラーを引き起こす手法は、クリスチャン・マークレー、刀根康尚、オヴァルやまた”グリッチ”と呼ばれる音楽ジャンルとして実践されてきた。しかし、これは具体的な物体(レコードやCD)を用いて行われてきたのだが、インターネットが主流になり、音楽が物体化せずにデジタル化した現代、いかにして音にエラーを引き起こさせるのかみたいな話をしており、うむ、と思った